ジェンダー平等

【父の日企画】自身初の父の日に父親をインタビュー

今日は父の日。私が父となって初めての父の日です。息子がまだ赤ん坊ということで、父の日と言われても「感謝されてるのかな〜」とか正直あまり実感はありません。しかし、親になって初めて気づいたことがあります。 子育てって親も育ててくれるんだ、と。 子育と言うものは予想外のことが起こるのが当たり前なので、色々な出来事に臨機応変することが必要です。例えば、裸で子供をプールで遊ばせていたらウンチをし始めた。まさか、自分の子供のウンチを素手で掴むとは思ってませんでしたが、裸で入れた親が悪かったですね。とりあえず一人用のプールで良かった。 お昼寝を一緒にしようとしたが、喚くばかり。自分も疲れていたので少し休めるかなと思ったらもっとストレスが溜まることもしょっちゅうです。でもまだ育休中の妻は、毎日何時間も当たり前のようにこのような対応をしているのかと思うと彼女に対しての感謝の気持ちでいっぱいになります。あと少しこんなことでストレスが溜まっている自分が情けなく思ってきます。 そこでよく疑問に思うのです。 他の親ってどうやって子育てしているんだろう? 父親としてのロールモデルは何人か頭に思い浮かびますが、一番身近である自分の父親に彼が初めて親になったときのことを聞いてみました。 Q. いつ父親になったのですか? A. 32歳の時に父親になるとわかった時から。 Q. 何が一番変わった? A. 責任感じゃないの。やっぱり子供一人育て上げなきゃという責任感が生活の中に、一つ一つこだわりを持って生きていくことにつながったんじゃないかな。例えば、あの時ヨットやってたんだけどレース中、風がだんだん強くなってリタイアして岸に帰る途中遭難しかけた。でも「ここでは死ぬことはできない。家族を養っていかなければならないから」とそのときの自分のポジションをシビアに見直して、大きなリスクは取らないことにした。 Q. じゃあヨットはそのときキッパリやめたの? A. いや、辞めてないけど危険なことはしないと決めた。 Q. 父親になった時、自分が想像していたものと実際に感じたことに違いはありましたか? A. やっぱり生まれる前に色々な育児の本を読んだり、先輩からアドバイスをもらったりしたけど、実際に生まれてきたらほとんど役に立たなかった。だから、1から自分たちで経験して学んでいく形になったかな。 Q. 当時は男性が育休を取ることはもっと珍しかったと思うけど、考えましたか? A. 自営だったから取れなかった。 Q. 父親になって一番良かったと思ったことはなんですか? A. 一番最初に勤めていた会社の社長が言った言葉がある。「松尾君、君はどう思ってるか分からないけど子供っていうのは少なくても君たちが生きたという証だよ。だからどんな無名の人でも地球上に生きた証が子供として残るから、人生としてある程度の重さがあるんじゃないかな。」その時は貧乏だったから、子供は作れないじゃないかなと思ってたけど、この一言を聞いてからやっぱり自分たちがどうやって生きていきたいのかというのは子供がいることによって変わるかもしれないし、色々と教わることになると思って意識が変わった。 Q. 親歴40年近くになりますが、振り返って見てもう一度やることがあったらこういう風にするっていうことはありますか? A. 過去は戻ることができないから、もしっていうのはありえない。たしかにあの時、ああすれば良かったということはあったかもしれない。それが学びで次に活かせば良いと思う。むしろ今とこれからをより良くするためにどうしたら良いのかを考える方がベター。 Q. 一人目が生まれて4年経って、二人目が生まれたらこうしようって思ったことは? A. 実は僕は子供は一人で良いと思ってた。でも直子は一人の子育ての経験は一回しかないけど二人持つことによって違う経験ができるし、子供たちも良い関係ができるのではないかと言う考えがあり、説得力があって考えが変わった。実際二人いてまた違う経験ができたことは本当に良かった。子供は二人は必要だと改めて思った。 Q. じゃあ、母ちゃんに感謝しておかなきゃな。この世に存在できなかったかもしれない。(笑)父ちゃん、二人子供欲しいって思ってなかったんだ? A. 大変だったからさ。初めての経験だったし、誰からのサポートも得られなかったから、「もう一人増えたらどうやって生活して行こうか?」って思ったところもあった。でも逆にそれで奮発してもっと頑張って仕事して少しでも生活を豊にしようと思った。それによって知恵も出てきたし、行動も変わってきた。だから子供っていうのは生きる力を与えてくれるのかな。 Q. 経験のある父親として新米の父親にアドバイスは? A. 自分の子供は主観的に見てしまうけど、客観的に見て「これで良いのだろうか」ということをいつも考えることが必要。他人の子供の行動や言動を見みたり、よその人の子育ての仕方から学んでいくことも大切。その中で、「ここは我慢して鍛えた方がいいかもしれない」と子供の自立を深めるためにも親が我慢しなければいけないことはある。親である以上自分の行動も制限される 中で共有する時間を楽しむこと。 どんなに小さくても子供はやはり一人の人間で個性がある、ただ社会での経験が全くないから自己中になりやすい。親としてそこを主観的に見てしまう難しさがあるけど、絶えずそのような時、少し俯瞰した目で見て接した方が良いと思う。 それに親が思っている通りに子供は育たないから、いつも子供の目線で考えてあげることが大切。興味のあることを一緒にやって、自分が子供の 時どうだったかを考えて、その行動を理解してあげることがポイントかな。 ————————- 私は父とは距離も近く、今でも親子として良く話す関係だとは思っていましたが、こうやって改めてインタビューをしてみると意外と知らないこともありました。私は第二子なので、子供一人で十分と思っていた父からその思いを聞くと、その考え方を変えてくれた母親に感謝の気持ちしかありません。私が生まれてきて父も、やっぱり子供が二人いて良かったな、と思ってくれたことは正直嬉しいですね。 父の日に自分の父親と親になることに関して話したり、(まだ話せない)自分の子供と一緒にいることが一番のプレゼントだなと思った、父として初めて迎えた父の日でした。 あなたは父の日をどのように過ごされましたか?

男性の育休の9つのメリット

私が育休から仕事に復帰をしてから1ヶ月が経ちました。育休中も時間が経つのはこんなにも早いのか、と感じていましたが、仕事でも同様ですね。先月のブログでは男性育休について自分の体験談を書きましたが、今回は私のインスタグラムでも紹介した「男性の育休に関しての9つのメリット」を個人、企業そして社会レベルでの視点という形でまとめてみました。 個人 1. 産後の女性を苦しめる「産後うつ」への対策になる 産後うつは出産した女性の10人に1人が発症すると言われるほど身近な問題。産後1年未満に死亡した妊産婦の死因の第1位は自殺ということも明らかになっており、平均すると1週間に1人の母親が、乳児を残して自ら命を絶っています。産後うつは産後2週間をピークに発症することが多い為、その期間に男性が育休を取得し、妻を物理的にも精神的にも支えることは非常に重要。 2. 育休を取ることで子供との距離が縮まり幸福度が上がる 育児に時間をかける男性は一般的に幸せだと感じ心身ともに健康な生活を送ります。積水ハウスの「イクメン白書2020」によると、育休を取った男性が家事と育児に関して「幸せ」と感じる割合は80%で、取らなかった人の70%を上回って、さらに育休を1ヶ月以上取得した男性は91%と極めて高い比率となっています。 3 男性の育休は、子供を持つ女性の雇用と収入を増やす 男性、一人ひとりがしっかりと育児休暇を取れば、それだけ子供を持つ女性が仕事をする機会を増やすことにつながります。その結果、世帯収入も増やすことができます。つまり今までの1+0=1という子持ちのカップルの働き方よりも、ワークライフを重視した共働きの0.75+0.75=1.5の方世帯収入も増えるということです。 企業 4. 社内イノベーションを生み出すきっかけにもなる 男性が育児休暇を取得し、子育てという経験を積むことで、多様な視点を醸成することになります。この多様な視点こそ社内におけるイノベーションを生み出します。 5. 優秀な若手人材の獲得が可能 日本の男性新入社員の80%が「子供が生まれた時には、育休を取得したい」と希望し、女子学生の90%が、「将来のパートナーに育休を取得してほしい」と望んでいます。企業が積極的により良い育児休暇システムを提供しているところほど優秀な人材が集まり、企業実績も上がる。そして、男性育休の取得率が高くなります。このサイクルがうまく機能している企業ほど就活においても「最も働きたい会社」として認知され、より優秀な人材を確保できます。 6. 生産性の向上 育休をきっかけに、家庭にコミットしようという意識が高まればやるべき仕事は時間内で成果を出す努力をし、時間あたりの生産性は向上し不要な残業は減少します。 社会 7. 日本の少子化改善への突破口 現在日本が抱える最も大きな社会課題は「少子化」。世界の人口は増え続けているのみかかわらず、日本の人口は減り続けています。日本は「1.26ショック」と言われた出生率の底時(2005年)から、ずっと低迷を続けていて、政府は「希望出生率1.8の実現」を2025年までの目標に掲げています。しかし人口を維持することができる出生率は2.07と言われており、この数値に達しない限り、日本の人口は減り続けていくとのこと。男性の家事・育児時間が長いほど、第二子の出産率が上がり、「男性の家庭進出」が進むほど、出生率が増加します。男性の育休は、「男性の家庭進出」をつくるきっかけになるのです。 ちなみに2020年の先進国における子供の幸福度ランキングではオランダが「世界で一番子供が幸せな国」でトップに立ちました。出生率を最低時の1.46から30年かけて1.7にしたという制度の改善が大きな要因とされています。 8. ジェンダー格差を埋めるカギ 男性の育休取得率が高い国は、ジェンダー格差が小さい。アイスランド、フィンランド、ノルウェーはGlobal Gender Gap Index Rankingでトップ3。男性育休取得率は75%以上となっています。その理由としてまず男性の育休取得率が高い国では、育休が取れるような社会制度が整っているということ。そして、それを実際に利用するという仕組みも工夫されています。例えばアイスランドでは、9ヶ月の育休が子持ちのカップルの間で認められているが、その全てを取得するために両親が3ヶ月ずつ取得しなければ残りの3ヶ月を取ることができません。このようなルールが育休制度に追加されたことによって、それまで30%程度にとどまっていた男性育休取得率が、現在では80%以上にもなっています。日本も素晴らしい育休制度の土台がありますが、男性の育休取得率は7%と低迷しています。これらの他国のように男性が育休を取りやすい仕組みを作ることが取得率の向上につながっていくと信じています。 9. 男性育休は皆が幸せになる社会への第一歩 ジェンダー格差が小さい国は世界のハッピネスランキングにも上位に入いります。先ほどのべたアイスランド、フィンランド、ノルウェーも「世界幸福度調査」のトップ5に入っています。男性育休率が高い国はジェンダー格差が小さい。ジェンダー格差が小さい国は国民の幸福度が高い、となるのでしょう。 企業は常に良い成績を上げ、社会に認められ、それを継続できることを望んでいます。そこには優秀な人材が必要でそれを実践するには優れた育休システムの完備が必要であることを気がつくべきである。政府と企業が率先してその改革に踏み出すことが「皆が幸せになる社会」を構築できる第一歩となるでしょう。 男性育休に関してのポストはここで一区切りつけたいと思います。「もっと知りたい!」という方には、この一冊をお勧めします。是非読んでみてください。 男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる 著者・小室淑恵 天野妙

学校では教わらなかった大切なこと

早いもので2月も終わり、待ちかねた春がもうそこまで来ています。 2月はジェンダーに関する大きなトピックがありましたね。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑とみられる発言が世界にも配信され、想像以上に大きな反響が起こりました。ジェンダー格差というものを日本では今までほとんど意識せず、事の重大さを知って初めて自覚した人も多かったのではないでしょうか。 ジェンダー格差のことは本来、学校で教えるべき大切なことなのに、どうして今日まで何もなく来てしまったのでしょうか。少なくとも、私が学生の時は学びませんでした。 では「誰がどのように、いつ、適切に教えたらよいのだろうか?」と言う課題が浮かび上がってきました。 実は先日、京都精華学園中学・高校の教員から依頼があり「ジェンダーの固定概念」についてオンラインセミナーを開催する機会をいただきました。そこで今回のメルマガはそのセミナーの内容の一部を書いてみたいと思います。 「男子」と「女子」って何だろう? まずはこの質問からはじめました。参加した生徒に「男子」や「女子」と聞いて何を思い浮かぶかを書いてもらいました。するとこの様な答えが返ってきました。 男子: 責任感がある スポーツができる 女子: 整理整頓が得意 家庭的 その後に、「ジェンダー平等」とは何でしょうか?と聞いたところ、教室は急に静かになりました。そもそもジェンダーって何だろう?と思った生徒も多かったと思います。 「学校では教わらなかった大切なこと」としてジェンダー教育について少し触れましたが、私はこれを性教育とは分けて考えるべきだと思っています。 ジェンダーとは「社会的、文化的に形成された性別」のことで、身体的な男女の違いではなく、社会の中の男女の差を意味します。日本ではこの「社会的性差」と「生物学的性差」を一緒に考えてしまう傾向にあり、社会が一般的に考える「男らしさ」や「女らしさ」は生まれ持ってきたものだ、と考えている人があまりにも多いことに驚きを感じています。 ジェンダーに対する固定概念に縛られず、ありのままの自分を表現できる社会が実現できたら、どれだけ心が解放され、より充実した人生を送れるだろうか?と生徒達に聞いてみたところ、「人のことを気にしたり、自分がどう見られているかを気にしがちですが、そのようなことは気にしなくても良いことが分かった」「自分の意見ばかりを主張するのではなく、様々な意見や思いを持った人がいることを認めることで社会は活性化していく」などのコメントを多くいただきました。 ジェンダーのことを学校で教えるべき、だろうか? ジェンダー教育は、他の教育と同じくらい学校で学ぶべき大切なことだと思います。最近ではテレビや新聞でもSDGsのことが大きく取り上げられています。ジェンダー平等もその中の一つですが、世界ジェンダーギャップ指数が日本は153カ国中121位と言う現状は真っ先に日本が取り組まなければならない課題の一つだと考えます。私は「学校では教わらなかった大切なこと」がまだまだあると思います。子供たちが小さい時からジェンダー教育を含め、それらを学校で教え始めれば家庭でもこの様な会話が形でごく自然な形で始まることを期待しています。 ジェンダーに関して私は博士号レベルの知識を持っているわけではありませんし教師の資格はありませんが、一人の親としても、できる限りこの大切なことを自分の子供はもちろん次の世代に伝えていきます。あなたも、ジェンダーの話をもっと周りの人としていきませんか。

日本人男性の体験談:フェミニズムは女性を解放し、男性を自由にし、人類を高める

(blossom the mediaのゲストポストから引用) まずはじめに、いくつかのことを言わせていただきたい。 私はマスキュリニティ、いわゆる男性性の博士号を持っていない。ジェンダー論の学位も持っていない。 私にあるのは、ある物語。 私は自分の名字を妻の姓に変えた。 2017年に妻と私が結婚したとき、私たちは姓を組み合わせることにした。 彼女の出身地である米国では、名前の変更プロセスは簡単だった。 しかし、それは日本では決して単純なことではなかった。 日本では、夫婦が姓を組み合わせたり、名前を変えたりすることは許可されていない。そこで、私は家庭裁判所に 行き、私の要求の承認を求めた。 裁判官は、妻の新しい姓である松尾ポストを採用することを提案した。米国ではすでにこの名前に変更されていたためである。 それで本質的に、私は妻の姓になった。 それが私の人生を変えた。 私自身の名字を変えるまで、日本では夫婦別姓が認められていないことを知らなかった。このように妻の姓を名乗ることを許されたのは、彼女が外国人だからという理由のためだと、日本人同士の夫婦にはその選択肢がないことを知らなかった。日本人女性の94%が結婚後、夫の名字に変えている事実を知らなかった。 母国の不平等について考えることによって、世界中で起きている問題に目を向けるようになった。 同じ仕事をしているのに、なぜ男性は女性よりも多くの給料をもらっているのだろう? なぜ専業主夫よりも、専業主婦の方が圧倒的に多いのだろう? ジェンダーの平等を達成すれば、男性にとってどのような利点があるだろう? 男性として生まれてきた私にとって、このようなことについて考える必要は今までなかった。 固定概念に縛られた環境の中で育った私だが、名字を変えたことで、このような役割の現状や危険さについて考えざるを得なくなった。 まだやることはたくさんあると気づいた。 私の周りの女性のほとんどが結婚後、夫の名字を名乗った。その理由を知らずに、ただそうするべきなのだと私は思っていた。ジェンダーの固定概念を変えられない事実、私たちの住んでいる世界の現状だと思い込み、受け入れていた。 S&P500の全従業員の45%が女性だが、女性は上級管理職の約27%しか占めておらず、高額所得者の11%に過ぎない。男性がもっとお金を稼ぐのは当たり前だと思っていた。 私はいろんなことを問い始めた。 なぜ男子は学校の成績で伸び悩むのか? なぜ刑務所は男性で溢れかえっているのか? なぜ自殺が50歳以下の男性の死因第一位なのか? それは、男性が男らしさはこうあるべきだと教え込まれてきたからである。男は強くあれ、感情を表に出すな、我慢しろ、何が何でも勝者になれ、アグレッシブでいろ、金持ちになれ、そしてセックスを楽しめ。 名字を変えたことによって、女性の生きる世界を垣間見ることができた。私たちの文化が、手間のかかる名義変更手続きは女性がしてくれるだろうと期待していることを知り、やっと家父長制の社会で生きる意味を知った。それと同時に、男性優位であるはずの仕組みが、男性を籠の中に閉じ込めていることにも気づいた。 そう。家父長制は、男性も傷つけているのだ。 社会の言う「当たり前」の通りにする必要がないと気づいたとき、私は閉じ込められていた籠から脱出することができた。ジェンダーの平等を追求するなかで、自分の信じる道を生きる勇気を手に入れた。 私がどのようにして自分の信じる道を進んでいるのか。 妻が妊娠した時、私は育児休業を取ることを決意した。上司に相談を持ちかける際、とてつもなく緊張した。長期の休みを取りたかったからだ。どのくらいかというと、7ヶ月間だ。 幸いなことに、理解のある上司だったため、私の希望はすぐに承認された。実際のところ、日本は父親・母親共に、最大一年間の有給の育児休業が認められている。 驚くことに、日本生産性本部の調査によると、男性の新入社員の約8割が育児休業を取りたいと望んでいるが、2020年に実際に育児休業を取った父親は、たった7パーセントだった。それだけでなく、育児休業を取った7パーセントの男性のうち、75パーセントが二週間かそれ以下しか仕事を休んでいない。 2020年、日本の環境大臣、および元内閣総理大臣小泉純一郎の息子である小泉進次郎が、仕事中毒の父親たちに率先垂範して、二週間の育児休業を取ったことで話題になった。父親が子供の誕生のあとに仕事を休むことが珍しいこの国では、大きな出来事であった。 寛大な育児休業制度があるにも関わらず、日本の男性のほとんどが雇用主に要求を却下されることや将来の昇進のチャンスが減ることを恐れて、育児休業を申請すらしない。これらの先入観について知ってはいたが、それでも同じように思わずにはいられなかった。実際に自分が申請するまで、育児休業を取ることがどれほど簡単か知らなかった。 今、この記事を書いている時点で、7ヶ月間の育児休業を半分以上過ぎている。生まれたばかりの息子を毎日見られるのがどれほど嬉しいことか、言葉で言い表せない。私にとって、妻と子と過ごすこの貴重な時間は、どんなお金にも代えられない。 より多くの男性が育児休業を取れば、女性が仕事場で活躍する機会がもっと増えると信じている。女性リーダーがもっと増えれば、組織全体がより多様で包括的になる。 もっとたくさんの国が母親・父親のどちらも有給の育児休業を取れるような制度を整えるべきである。さらに重要なのは、男性が実際に長期的な育児休業を取るような文化を育むことである。それが普及しなければ、実現は難しいだろう。 私は、自分の持っている特権を利用して、世界のジェンダー不平等にまだ気づいていないかもしれない男性達に呼びかけることにしている。メリンダ・ゲイツの言うように、「女性の地位が向上すれば、人類全体が向上する。」そのためには、男性も女性と同じくらいジェンダーの平等を推進し、家父長制を取り壊すことに努めなければならない。 Translated by Yuko C. Shimomoto 

「男だろ!」にざわついた心

2021年も2月に入りましたが、正月の話です。 今年は久しぶりに実家で年始を迎えることができました。私は小さい頃から自宅の近くを走る箱根駅伝を家族と一緒に見てきたのですが今年は感染症の影響もあり、久しぶりに家で餅を食べながらテレビで箱根駅伝を見ました。 今年はまれに見るドラマティックな展開があり最終10区、ゴール手前2kmでの劇的な逆転で駒沢大学が総合優勝を遂げました。 逆転が現実味を帯びそうな状況になってきた時、選手の後ろを走っている監督車から聞こえてくる声に違和感を感じました。 「男だろ!行け!」この大八木弘明監督が選手にかけた「男だろ」発言はSNSでは賛成の声も多く聞こえました。 「男らしさ」とは 「選手が監督の檄で奮起したのだから良い声掛けだ」「選手と監督という本人同士が良ければそれでいい。外野がとやかく言う問題ではない。」 スポーツは勝つことに繋がれば、どのような方法でもこのような檄を入れてもいいのでしょうか? もしくはこのような発言は、公でなければ、内輪だけのものであれば良いことなのでしょか?  私は「男らしさ」という言葉を「立派で優れた人間」という意味で使っていることにジェンダーに対する偏見を感じるのです。 なぜ問題かというと、もちろん「立派で優れた人間」は男性だけがなるものではありません。女性も「立派で優れた人間」は数多くいるからです。「理想的な人物像」というものは誰もが望むものですが「男」という言葉と紐づけて理想の人物像を表すことは、ジェンダーに対する誤った固定概念からくるものでとても違和感を感じます。 もし、それに違和感を感じない方は、次の場面を想像してみてください。 例えば、全日本大学女子駅伝大会で、同じ様な場面があったとして監督から、「お前女だろ。行け!」という言葉が出てくるでしょうか? おそらくありえないですね。反対に抜かれた選手は「女々しい」のでしょうか?そんなことはありません。 女性が素晴らしい能力を発揮した時に「男勝りの動き・行動」と表現されます。この表現も何か変ですよね。それはスポーツでも、一般社会でも、「女だろ」と言って励ましたりしないからです。「男だからやれるだろう」という考えは男性優位主義を感じさせられます。 今週、朝日新聞のオピニオンの1面でこの発言について取り上げられていたのですが、ジェンダーに対する固定概念に違和感を持つ人が増えているな、と気付きました。しかし、違和感を持つ人が少なく無いのに、あの発言が称えられるのはなぜでしょう。 スポーツは別という異質な考え方 「男だろ」が称えられる理由の一つとして、競技という戦いの場においては「戦いは男に任せろ、力のない女は戦いの邪魔だ」と男性優位の社会が歴史的に戦いの中から構築されてきた経緯があり、それをスポーツに当てはめているところがあるからです。 だから、競い合っている場面で「男だろ・男を見せろ」が潜在的に持っている意識として自然に言葉となって表に出てくるのです。 スポーツは、もともと男の行為、すべきもの、というイメージが圧倒的に強い社会では、競技に勝つことが「男をあげる」「男の中の男」ということではないでしょうか。スポーツでは許されるという例外的な考え方を「異質なもの」と感じなければ、人格を無視するような暴力や暴言を用いることを容認し、一般社会ではパワハラとみなされる発言や行為が今でも特にスポーツの世界では継続して発生しているのです。 「スポーツなのだから、そこまで目くじらを立てることはない」という人もいるかもしれません。私はその意見には強く反対します。スポーツは単なる競技ではなく時として社会や政治、経済そして日々の暮らしへと影響を与えているからです。 スポーツから学ぶジェンダー 駅伝もそうですが、日本で男性に人気あるスポーツは野球やサッカーですがチームプレイなので全員の意思の統一と連携が求められるものです。 個人個人がチームを支え合い、それが輪となりさらに和となって勝利を目指し競いあることが大切でそこには「男らしさ」も「女らしさ」も必要がないのではないでしょうか。 ジェンダーに関する固定概念は残念ながらまだ日本では一つの文化になっています。 まずスポーツからでも「男らしさ」や「女らしさ」という概念から解き放つことで社会が変わっていく必要があります。それは、我々の毎日の生活のちょっとしたことから変えていくべきものです。 スポーツを通じて、これから競技を始める子供達にどの様なメッセージを発するか、指導者は意識する必要があります。それ以上に、この様な話題を家族や学校で話し合っていくことが大切だと思います。