ジェンダー教育

男性の育休の9つのメリット

私が育休から仕事に復帰をしてから1ヶ月が経ちました。育休中も時間が経つのはこんなにも早いのか、と感じていましたが、仕事でも同様ですね。先月のブログでは男性育休について自分の体験談を書きましたが、今回は私のインスタグラムでも紹介した「男性の育休に関しての9つのメリット」を個人、企業そして社会レベルでの視点という形でまとめてみました。 個人 1. 産後の女性を苦しめる「産後うつ」への対策になる 産後うつは出産した女性の10人に1人が発症すると言われるほど身近な問題。産後1年未満に死亡した妊産婦の死因の第1位は自殺ということも明らかになっており、平均すると1週間に1人の母親が、乳児を残して自ら命を絶っています。産後うつは産後2週間をピークに発症することが多い為、その期間に男性が育休を取得し、妻を物理的にも精神的にも支えることは非常に重要。 2. 育休を取ることで子供との距離が縮まり幸福度が上がる 育児に時間をかける男性は一般的に幸せだと感じ心身ともに健康な生活を送ります。積水ハウスの「イクメン白書2020」によると、育休を取った男性が家事と育児に関して「幸せ」と感じる割合は80%で、取らなかった人の70%を上回って、さらに育休を1ヶ月以上取得した男性は91%と極めて高い比率となっています。 3 男性の育休は、子供を持つ女性の雇用と収入を増やす 男性、一人ひとりがしっかりと育児休暇を取れば、それだけ子供を持つ女性が仕事をする機会を増やすことにつながります。その結果、世帯収入も増やすことができます。つまり今までの1+0=1という子持ちのカップルの働き方よりも、ワークライフを重視した共働きの0.75+0.75=1.5の方世帯収入も増えるということです。 企業 4. 社内イノベーションを生み出すきっかけにもなる 男性が育児休暇を取得し、子育てという経験を積むことで、多様な視点を醸成することになります。この多様な視点こそ社内におけるイノベーションを生み出します。 5. 優秀な若手人材の獲得が可能 日本の男性新入社員の80%が「子供が生まれた時には、育休を取得したい」と希望し、女子学生の90%が、「将来のパートナーに育休を取得してほしい」と望んでいます。企業が積極的により良い育児休暇システムを提供しているところほど優秀な人材が集まり、企業実績も上がる。そして、男性育休の取得率が高くなります。このサイクルがうまく機能している企業ほど就活においても「最も働きたい会社」として認知され、より優秀な人材を確保できます。 6. 生産性の向上 育休をきっかけに、家庭にコミットしようという意識が高まればやるべき仕事は時間内で成果を出す努力をし、時間あたりの生産性は向上し不要な残業は減少します。 社会 7. 日本の少子化改善への突破口 現在日本が抱える最も大きな社会課題は「少子化」。世界の人口は増え続けているのみかかわらず、日本の人口は減り続けています。日本は「1.26ショック」と言われた出生率の底時(2005年)から、ずっと低迷を続けていて、政府は「希望出生率1.8の実現」を2025年までの目標に掲げています。しかし人口を維持することができる出生率は2.07と言われており、この数値に達しない限り、日本の人口は減り続けていくとのこと。男性の家事・育児時間が長いほど、第二子の出産率が上がり、「男性の家庭進出」が進むほど、出生率が増加します。男性の育休は、「男性の家庭進出」をつくるきっかけになるのです。 ちなみに2020年の先進国における子供の幸福度ランキングではオランダが「世界で一番子供が幸せな国」でトップに立ちました。出生率を最低時の1.46から30年かけて1.7にしたという制度の改善が大きな要因とされています。 8. ジェンダー格差を埋めるカギ 男性の育休取得率が高い国は、ジェンダー格差が小さい。アイスランド、フィンランド、ノルウェーはGlobal Gender Gap Index Rankingでトップ3。男性育休取得率は75%以上となっています。その理由としてまず男性の育休取得率が高い国では、育休が取れるような社会制度が整っているということ。そして、それを実際に利用するという仕組みも工夫されています。例えばアイスランドでは、9ヶ月の育休が子持ちのカップルの間で認められているが、その全てを取得するために両親が3ヶ月ずつ取得しなければ残りの3ヶ月を取ることができません。このようなルールが育休制度に追加されたことによって、それまで30%程度にとどまっていた男性育休取得率が、現在では80%以上にもなっています。日本も素晴らしい育休制度の土台がありますが、男性の育休取得率は7%と低迷しています。これらの他国のように男性が育休を取りやすい仕組みを作ることが取得率の向上につながっていくと信じています。 9. 男性育休は皆が幸せになる社会への第一歩 ジェンダー格差が小さい国は世界のハッピネスランキングにも上位に入いります。先ほどのべたアイスランド、フィンランド、ノルウェーも「世界幸福度調査」のトップ5に入っています。男性育休率が高い国はジェンダー格差が小さい。ジェンダー格差が小さい国は国民の幸福度が高い、となるのでしょう。 企業は常に良い成績を上げ、社会に認められ、それを継続できることを望んでいます。そこには優秀な人材が必要でそれを実践するには優れた育休システムの完備が必要であることを気がつくべきである。政府と企業が率先してその改革に踏み出すことが「皆が幸せになる社会」を構築できる第一歩となるでしょう。 男性育休に関してのポストはここで一区切りつけたいと思います。「もっと知りたい!」という方には、この一冊をお勧めします。是非読んでみてください。 男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる 著者・小室淑恵 天野妙

学校では教わらなかった大切なこと

早いもので2月も終わり、待ちかねた春がもうそこまで来ています。 2月はジェンダーに関する大きなトピックがありましたね。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑とみられる発言が世界にも配信され、想像以上に大きな反響が起こりました。ジェンダー格差というものを日本では今までほとんど意識せず、事の重大さを知って初めて自覚した人も多かったのではないでしょうか。 ジェンダー格差のことは本来、学校で教えるべき大切なことなのに、どうして今日まで何もなく来てしまったのでしょうか。少なくとも、私が学生の時は学びませんでした。 では「誰がどのように、いつ、適切に教えたらよいのだろうか?」と言う課題が浮かび上がってきました。 実は先日、京都精華学園中学・高校の教員から依頼があり「ジェンダーの固定概念」についてオンラインセミナーを開催する機会をいただきました。そこで今回のメルマガはそのセミナーの内容の一部を書いてみたいと思います。 「男子」と「女子」って何だろう? まずはこの質問からはじめました。参加した生徒に「男子」や「女子」と聞いて何を思い浮かぶかを書いてもらいました。するとこの様な答えが返ってきました。 男子: 責任感がある スポーツができる 女子: 整理整頓が得意 家庭的 その後に、「ジェンダー平等」とは何でしょうか?と聞いたところ、教室は急に静かになりました。そもそもジェンダーって何だろう?と思った生徒も多かったと思います。 「学校では教わらなかった大切なこと」としてジェンダー教育について少し触れましたが、私はこれを性教育とは分けて考えるべきだと思っています。 ジェンダーとは「社会的、文化的に形成された性別」のことで、身体的な男女の違いではなく、社会の中の男女の差を意味します。日本ではこの「社会的性差」と「生物学的性差」を一緒に考えてしまう傾向にあり、社会が一般的に考える「男らしさ」や「女らしさ」は生まれ持ってきたものだ、と考えている人があまりにも多いことに驚きを感じています。 ジェンダーに対する固定概念に縛られず、ありのままの自分を表現できる社会が実現できたら、どれだけ心が解放され、より充実した人生を送れるだろうか?と生徒達に聞いてみたところ、「人のことを気にしたり、自分がどう見られているかを気にしがちですが、そのようなことは気にしなくても良いことが分かった」「自分の意見ばかりを主張するのではなく、様々な意見や思いを持った人がいることを認めることで社会は活性化していく」などのコメントを多くいただきました。 ジェンダーのことを学校で教えるべき、だろうか? ジェンダー教育は、他の教育と同じくらい学校で学ぶべき大切なことだと思います。最近ではテレビや新聞でもSDGsのことが大きく取り上げられています。ジェンダー平等もその中の一つですが、世界ジェンダーギャップ指数が日本は153カ国中121位と言う現状は真っ先に日本が取り組まなければならない課題の一つだと考えます。私は「学校では教わらなかった大切なこと」がまだまだあると思います。子供たちが小さい時からジェンダー教育を含め、それらを学校で教え始めれば家庭でもこの様な会話が形でごく自然な形で始まることを期待しています。 ジェンダーに関して私は博士号レベルの知識を持っているわけではありませんし教師の資格はありませんが、一人の親としても、できる限りこの大切なことを自分の子供はもちろん次の世代に伝えていきます。あなたも、ジェンダーの話をもっと周りの人としていきませんか。

日本人男性の体験談:フェミニズムは女性を解放し、男性を自由にし、人類を高める

(blossom the mediaのゲストポストから引用) まずはじめに、いくつかのことを言わせていただきたい。 私はマスキュリニティ、いわゆる男性性の博士号を持っていない。ジェンダー論の学位も持っていない。 私にあるのは、ある物語。 私は自分の名字を妻の姓に変えた。 2017年に妻と私が結婚したとき、私たちは姓を組み合わせることにした。 彼女の出身地である米国では、名前の変更プロセスは簡単だった。 しかし、それは日本では決して単純なことではなかった。 日本では、夫婦が姓を組み合わせたり、名前を変えたりすることは許可されていない。そこで、私は家庭裁判所に 行き、私の要求の承認を求めた。 裁判官は、妻の新しい姓である松尾ポストを採用することを提案した。米国ではすでにこの名前に変更されていたためである。 それで本質的に、私は妻の姓になった。 それが私の人生を変えた。 私自身の名字を変えるまで、日本では夫婦別姓が認められていないことを知らなかった。このように妻の姓を名乗ることを許されたのは、彼女が外国人だからという理由のためだと、日本人同士の夫婦にはその選択肢がないことを知らなかった。日本人女性の94%が結婚後、夫の名字に変えている事実を知らなかった。 母国の不平等について考えることによって、世界中で起きている問題に目を向けるようになった。 同じ仕事をしているのに、なぜ男性は女性よりも多くの給料をもらっているのだろう? なぜ専業主夫よりも、専業主婦の方が圧倒的に多いのだろう? ジェンダーの平等を達成すれば、男性にとってどのような利点があるだろう? 男性として生まれてきた私にとって、このようなことについて考える必要は今までなかった。 固定概念に縛られた環境の中で育った私だが、名字を変えたことで、このような役割の現状や危険さについて考えざるを得なくなった。 まだやることはたくさんあると気づいた。 私の周りの女性のほとんどが結婚後、夫の名字を名乗った。その理由を知らずに、ただそうするべきなのだと私は思っていた。ジェンダーの固定概念を変えられない事実、私たちの住んでいる世界の現状だと思い込み、受け入れていた。 S&P500の全従業員の45%が女性だが、女性は上級管理職の約27%しか占めておらず、高額所得者の11%に過ぎない。男性がもっとお金を稼ぐのは当たり前だと思っていた。 私はいろんなことを問い始めた。 なぜ男子は学校の成績で伸び悩むのか? なぜ刑務所は男性で溢れかえっているのか? なぜ自殺が50歳以下の男性の死因第一位なのか? それは、男性が男らしさはこうあるべきだと教え込まれてきたからである。男は強くあれ、感情を表に出すな、我慢しろ、何が何でも勝者になれ、アグレッシブでいろ、金持ちになれ、そしてセックスを楽しめ。 名字を変えたことによって、女性の生きる世界を垣間見ることができた。私たちの文化が、手間のかかる名義変更手続きは女性がしてくれるだろうと期待していることを知り、やっと家父長制の社会で生きる意味を知った。それと同時に、男性優位であるはずの仕組みが、男性を籠の中に閉じ込めていることにも気づいた。 そう。家父長制は、男性も傷つけているのだ。 社会の言う「当たり前」の通りにする必要がないと気づいたとき、私は閉じ込められていた籠から脱出することができた。ジェンダーの平等を追求するなかで、自分の信じる道を生きる勇気を手に入れた。 私がどのようにして自分の信じる道を進んでいるのか。 妻が妊娠した時、私は育児休業を取ることを決意した。上司に相談を持ちかける際、とてつもなく緊張した。長期の休みを取りたかったからだ。どのくらいかというと、7ヶ月間だ。 幸いなことに、理解のある上司だったため、私の希望はすぐに承認された。実際のところ、日本は父親・母親共に、最大一年間の有給の育児休業が認められている。 驚くことに、日本生産性本部の調査によると、男性の新入社員の約8割が育児休業を取りたいと望んでいるが、2020年に実際に育児休業を取った父親は、たった7パーセントだった。それだけでなく、育児休業を取った7パーセントの男性のうち、75パーセントが二週間かそれ以下しか仕事を休んでいない。 2020年、日本の環境大臣、および元内閣総理大臣小泉純一郎の息子である小泉進次郎が、仕事中毒の父親たちに率先垂範して、二週間の育児休業を取ったことで話題になった。父親が子供の誕生のあとに仕事を休むことが珍しいこの国では、大きな出来事であった。 寛大な育児休業制度があるにも関わらず、日本の男性のほとんどが雇用主に要求を却下されることや将来の昇進のチャンスが減ることを恐れて、育児休業を申請すらしない。これらの先入観について知ってはいたが、それでも同じように思わずにはいられなかった。実際に自分が申請するまで、育児休業を取ることがどれほど簡単か知らなかった。 今、この記事を書いている時点で、7ヶ月間の育児休業を半分以上過ぎている。生まれたばかりの息子を毎日見られるのがどれほど嬉しいことか、言葉で言い表せない。私にとって、妻と子と過ごすこの貴重な時間は、どんなお金にも代えられない。 より多くの男性が育児休業を取れば、女性が仕事場で活躍する機会がもっと増えると信じている。女性リーダーがもっと増えれば、組織全体がより多様で包括的になる。 もっとたくさんの国が母親・父親のどちらも有給の育児休業を取れるような制度を整えるべきである。さらに重要なのは、男性が実際に長期的な育児休業を取るような文化を育むことである。それが普及しなければ、実現は難しいだろう。 私は、自分の持っている特権を利用して、世界のジェンダー不平等にまだ気づいていないかもしれない男性達に呼びかけることにしている。メリンダ・ゲイツの言うように、「女性の地位が向上すれば、人類全体が向上する。」そのためには、男性も女性と同じくらいジェンダーの平等を推進し、家父長制を取り壊すことに努めなければならない。 Translated by Yuko C. Shimomoto